平地を歩くのとは違い、山道ではかなりスタミナを消耗します。初めて登るときには、張り切り過ぎて最初からペースを上げがちになりますが、そのような歩き方をすると体力が持たず、体調を崩してしまい登山を十分楽しめなくなってしまいます。ですから疲れにくい歩き方を習得し、筋肉をほぐすためのストレッチを行い、適度な休憩を取ることはとても大切です。そのようにすれば、周りの景色を楽しみながら、初めての登山を満喫できるでしょう。
登りの歩き方
山道には石や木の根などが至る所にあり、つまづきやすい状況になっています。登るときには膝を上げるようにして、転倒や滑落の危険を避けます。また、背中を丸めないようにして、頭から後ろ足までのラインがまっすぐになるようにします。まっすぐにすると、背骨で荷物を支えることができ、筋肉に対する負担が減るので疲労が軽減されます。
足を踏み出す時には外側に開きます。傾斜が大きいところでは足を開く角度も大きくします。こうすると足首を曲げる角度が少なくて済むので、足首にかかる負担を減らすことができます。足を開くとバランスがとりにくくなるので、進行方向の直線上にかかとを置くような気持で歩くと体が安定します。
着地は足の裏全体でし、後ろに引いている脚の重心を徐々に前の脚に移動させるように意識します。また、着地する時は、靴一足分の長さを超えないようにして、小さな歩幅で登ります。さらに、腕を大きく振って歩くと、全身の筋肉がよく動くので、下半身だけに負担がかかるのを防ぐことができ、疲労を軽減できます。急いで登ると疲労が増すので、ゆっくりと、しっかり呼吸をしながら登ります。呼吸が乱れてきたら、速度を落として登りましょう。
階段は傾斜の道に比べると滑りにくいので登りやすいのですが、一気に登ると疲れてしまいます。ですから、やはりゆっくりと、そして反動をつけずに登ります。階段も、後ろ脚に重心を残したまま前の脚に重心を徐々に移動させるという方法で登りましょう。この時に体をまっすぐ上に伸ばすような気持で登ると疲れにくいです。
下りの歩き方
下るときも重心のかけ方や姿勢は同じです。違う点は足を開いたり、膝を高く上げる必要がないということです。下りの時は膝を傷めやすいので重心をゆっくり前に移動させるようにしましょう。また、下りる時には腰を曲げがちになりますが、そうすると滑りやすくなるので、体の線が地面に対して垂直になるように意識します。勾配がかなり急な場合は、腰を落としてわずかに前傾姿勢になり、歩幅を小さくしてゆっくり下りましょう。
途中で疲れたら
登りや下りの時に疲れを感じたら、無理して歩き続けないで休憩してストレッチを行います。
休憩のとり方
出発してから20~30分後ぐらいはまだ疲れていないかもしれませんが、ザックのフィット感や靴ひもの絞め具合などを確認するために休憩します。違和感を持ったまま登り続けるのは疲労や事故につながるので、きちんと確認しましょう。チェックを終えて登山を再開したら、その後の休憩の目安は40~50分毎に5~10分です。もちろん個人の体力やコースによって休憩のとり方は多少違ってきます。ただ、あまり長く休憩してしまうと体が冷えて疲労が増すので休憩は短めに取りましょう。
休憩時には水分補給も忘れないようにしましょう。喉が渇いていなくても、飲む必要があります。また、一気にたくさん飲むのではなく少量の水をこまめに補給するようにします。
ストレッチ
休憩の際にはストレッチも行うようにします。登山ではお尻や太もも、ふくらはぎに常に負荷がかかるので、筋肉が硬くなっていきます。ストレッチで筋肉をほぐすと血流がよくなって栄養素や酸素が十分いきわたるようになるので、筋肉の働きがよくなります。頂上に着いたときにも食事の前に、ストレッチをすると血流がよくなってエネルギー補給が効果的にできます。ベンチに座ってお尻の筋肉をほぐすには、右足を左足の太ももに乗せて状態を前に傾けます。太ももの前の筋肉をほぐすには、立った状態で片足のかかとをお尻に着けるようにします。太ももの後ろの筋肉のストレッチは、足を前後に開き、前に出した足のかかとを上げて上体を前に倒します。これらのストレッチをいずれも左右交互に5~10回行います。
山を下りる時にも登る時と同様に途中でストレッチをします。登るときよりも体は楽に感じるかもしれませんが、関節や腱に負担がかかっているので、定期的に時間を取ってストレッチする必要があります。また、下山したらすぐに座り込んだりしないで、少し平らな道を歩いてからストレッチします。左右に足を開いて斜め前屈をすると腰と背中のストレッチができます。登山前と同様に太もも、ふくらはぎ、お尻などの筋肉もほぐします。下山後もストレッチを行うことで、痛みが生じるのを防ぐことができます。入浴した後にさらにストレッチを行えばより効果的です。